遅いけど、丁寧
最近はクリニックの問題が続く。
今度は診察スピードの問題。非常勤で入ってもらっていた医師の診察スピードが遅い。遅いと患者さんの待ち時間が長くなって満足度低下につながるし、スタッフは残業が発生し帰れない。すると、患者離れ&離職という最悪な流れとなる。
では診察スピードが速ければ良いのか。そうでもないのである。診察スピードが速くても、診察精度や接遇が悪いとこれも患者満足度低下につながる。むしろこちらの方が満足度低下にはつながりやすい。
だが、患者満足度低下だけで、スタッフの離職につながらないのであればこちらの方がマシか?これもそうではない。なぜなら、患者満足度が低下するとクレームが増え、スタッフの負担が大きくなり、やはり離職につながる。
また、シンプルに患者満足度の高い診察の方がやりがいを感じやすい傾向にあり、離職が抑えられる・・・ような気がする。
なぜ遅い?
そもそも、なぜこんなに診察が遅いのか。私の知る限り、いくつかパターンがある。
①若い医師で経験不足
これは、単純に経験不足。専門医を未取得であったり、シンプルにクリニックの経験値が少なかったり。仕方ないように思われるかもしれないが、来院する患者さんからしたら知ったことではないし、雇う側からも知ったことではない。できるようになってから来い。
②若手ではないが、技術未習熟
卒後10年前後〜20年ぐらいに多い。どちらかといえばこちらの方が問題だろう。
そもそも、診察スピードが速くなるのは、経験値を積む中で、診察に残すものと省くものを取捨選択することでスピードが速くなる。
これは必ずいる。これはほぼいらない。これは●●のケースでのみ選択する。これは△△のケースではいらない。
普段経験する診療の中で、このような思考を常に繰り返す。PDCAサイクルを回す。そうしていく中で、どれだけコンパクトな時間で精度の高い、患者満足度の高い診療を行うにはどうしたら良いのか、それを試行錯誤していくのである。
「遅いけど丁寧」というのは良いことではない。研鑽不足なのだ。「速く、精度が高く、満足度が高い。」ここを目指して日々訓練する。
医師としての味
そうした研鑽を積んでいると、だんだんとその医師の味が出てくる。
それは経験してきた症例(医師人生で個人差が生じる)、医師の考えやポテンシャルなどで決まってくるのだが、とても悪い言い方をすると、「捨てるパターン」が出てくる。
患者さんから見ると、「私には合わない先生」というやつなのだろう。外来の中で患者さんをパターン化(医学的ではない部分)していって、それぞれのパターンに対する対応が決まってくるものなのだが、どうしてもその医師にはうまく対応できないパターンというのが生じる。
そのパターンは捨てるしかない。自分に対応できないから、あるいは対応しようとすると時間がかかるから、諦めモードに入る。(繰り返すが、医学的に諦めるのではない。)
「捨てるパターン」を作ることも速度を上げる重要な一手なのだが、この「捨てるパターン」が少なければ少ないほど、医師としての味が魅力的なものとなる。
満足度を上げる鍵
こんな偉そうなことを言っているが、私は患者満足度を上げるのが苦手だ。仕方がないので、試行錯誤し、満足度を上げる技術を2つほど確保した。
一つは「視線」。
「視線が合う」だけで、なぜか人は外来に満足するようになる。その内容がどんなに稚拙でも、本人が求めるものでなかったとしても、「なんとなく、満足する」のだ。
もう一つは、患者さんが本当に求めるものは何かを捉えること。これはある程度外来をやっていると掴めるようになる。大してパターンがないのだ。
まず、患者さんが求めるものを場合分けする。
❶実現可能なもの
外来でたくさんお話ししてくれるが、結局、「今すぐインフルエンザの検査を受けたい」というだけのことがある。このような場合はさっさと実現させてしまう。鼻をほじって終わり。
発熱から●時間経過しないと〜、検査の感度特異度が〜、などと話すのは無駄である。診察スピードにも、満足度にも寄与しない。すぐ検査、すぐ帰宅。これがベスト。実現可能な要望であれば叶えてあげるのが吉。
❷実現不可能なもの
今すぐ症状を止める薬が欲しい、近日中に予定(旅行など)があるからどうにかしたい、この診察1回で原因と診断をはっきりさせたい、などなど。
多くは医学的に実現不可能なものなので、どうしようもない。だが、そこについては真っ向から否定しても感情を逆撫でするだけである。
ここで出現するのが「傾聴と共感」である。医学部では傾聴と共感が医師にとって重要と授業で習うため、多くの医師がすべての症例で傾聴と共感を大事にする傾向がある。
私に言わせれば、それは違う。「傾聴と共感」は患者さんが求めているにも関わらず、それを実現させてあげられない時にこそ使う技術だ。乱れ打ちして良い技術ではない。診察スピードを低下させるという重大な副作用を有する。
❸何を求めているのか不明
こちらの言語理解能力が低いのか、患者さんの言語化する力が低いのか、どちらかはわからないが、意味不明なことがある。これは仕方がない。「傾聴と共感」は使用するが、エンドレスなことも多いため途中で切り上げることが多い。ここについては私はまだ最適解を見出せておらず、「捨てるパターン」となってしまっている。これからの診療で磨いていきたい領域だ。
日々研鑽
そんなこんなで日々研鑽をしている。私もまだまだ人に語れるほどの年齢ではないので、間違っている点も多いかもしれない。
だが、「遅いけど丁寧」が良いことではないというのだけは確信している。
